東京・新宿ピカデリーでは、9月5日(土)に「サンライズフェスティバル2015白南風」の『ガンダムビルドファイターズトライ』オールナイト上映が開催された。
「サンライズフェスティバル」は、サンライズが誇る珠玉の名作や話題の新作を上映する毎夏恒例のアニメ上映イベントで、8月15日(土)から9月12日(土)にかけて、テアトル新宿、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿にて開催される。
『ガンダムビルドファイターズトライ』オールナイト上映では、ゲストとして『GBFトライ』でメカニックデザインを務める大河原邦男氏、アニメーターの大張正己氏、バンダイ ホビー事業部の馬場俊明氏、サンライズ プロデューサーの小川正和氏が登壇し、『GBFトライ』で登場するガンプラにまつわるエピソードなどが語られた。
多くの人が詰めかけたトークショーの模様を、さっそくレポートしていこう。
トークショーは、まず司会を務めるアニメーション研究家・五十嵐浩司氏が登壇し、続いてゲストの大河原氏、大張氏、馬場氏、小川氏が登場。挨拶も早々にさっそくトークがはじまった。
はじめに、小川プロデューサーから「本作はガンプラが活躍する作品だが、メカアクションに関しては手を抜かずにやったので、いろいろな人に大変なお願いをしてしまった」と語られ、それに対し大河原氏が「楽しんでやれたがタイトなスケジュールだった」と茶目っ気たっぷりに言葉を返すと会場からは笑いが起きた。
次に、主人公カミキ・セカイのガンプラである「ビルドバーニングガンダム」の話へと移る。
デザインについては、小川氏や馬場氏が、綿田慎也監督や脚本の黒田洋介氏などと話し合い、格闘機であることや、クリスタルの位置など商品化に合わせた細かなコンセプトを決めた後、大河原氏と密に話し合いながら決めていったという。
また、大河原氏曰く「最近のメカ物は余分なものが多く、使われないものが多いので、そのアンチテーゼとして素体のような、あっさりとしたデザインにした」とのことだ。
続いて、本編でのガンプラの描かれ方についての話が展開。大張氏は「アニメーターは役者でもあるので、いかにかっこよく見えるかを考えて描く。だからMSの初登場シーンは非常に気を使った」とのことで、その結果メイジン・カワグチのガンプラ「レッドウォーリア」の“降臨”シーンが生まれたという。さらに、主人公機の必殺技に関しては「ガンプラをメカとしてではなくキャラクターとして、有機的なものを意識して描いた」といい、画面で見せるガンプラの動きに関しても、「アニメーターにはその脳内に専属のスーツアクターがいて、それらがガンプラの動きのもとになっている」と話していた。
続いて、今作でもっとも注目を集めたと言ってもいい「トライオン3」についての話に移る。
もともとは、大張氏が大河原氏の「トライゼータ」を描きたいという要望からはじまったというのだが、小川氏が「せっかくならば新たに何かやろう」とのことで、大河原氏にデザインをお願いしたという。
また、馬場氏の口から「3体のうち、ライオンと鳥は、バックパックと下半身ですんなりと出来上がったのだが、残った上半身がどうしても形にならず、苦心した結果、無理やりマンタにした」と制作の裏話が披露されたが、かつて海に潜っていた経験のある大河原氏は、出来上がったマンタを見て「あれでいいのかな…?」と思ったという。また、「トライオン3」の様な合体物は当然3体分のデザインをしなくてはならないため、非常に面倒だったそうだが、「その分ギャラはアップしたのでよかった」と笑いを誘う場面も見られた。
トライオン3の話は続き、合体バンクの原画やコンテを担当した大張氏曰く「アニメーターとしてトライオン3は描けてうれしかった。描いていて“燃えた”」とのこと。さらに今だから言えることとして必殺技の「ハイ・メガキャノン」を発射する際、顔が割れる「フェイスオープン」をさせたかったという話が飛び出し、会場では笑いと歓声が上がった。しかし、残念ながら商品にはそれがないので実現には至らなかったという。
続いて、最終話に登場した「カミキバーニングガンダム」の話題に移ると、馬場氏が「格闘機というコンセプトだけを伝えて、後は大河原氏に自由にデザインをしてもらった」という。
それを受けて大河原氏は「キャラクタライズとはどういうものかを考えて、デザインを起こした」と語り、肩にマーキングされた「神」の文字や、腰部の柔道着の帯をあしらったデザインなどがそのキャラクター性を顕著にしているという。
すると大張氏が「『カミキバーニング』の登場シーンで肩に『神』の文字がフェードインで現れる演出は僕のアドリブです」という裏話も楽しげに披露し、さらに担当する場面がすでに決まっていたことや、動きの見本として琉球空手の型を持ってきたことなども明かされた。
また、「カミキバーニング」のデザイン原画も展示されている「大河原邦男展」のことにも触れ、大河原氏は「ロボは胸とヘルメットが命。自分は絵が下手だからモノ作りの観点からデザインを起こすことが多い」と自身のデザインに対する考え方を語ると、それを受けて大張氏は「大河原氏の描くデザインは、線は少ないのに質感や奥行など得られる情報量がものすごく多い。ゆえに動かしたくなるデザインだ」と絶賛した。
続いて、最終回についての話が語られた。
馬場氏が言うには「当初はあそこまで多くのガンプラを出すつもりはなかったが、商品化予定がいつのまにか増えていたため、やっていいならやろう」ということで、あのように多くのガンプラが登場したとのこと。その結果としてあの「すーぱーふみな」も生まれたのだという。
ただ、商品化が前提だったため、大河原氏をはじめ、デザイナーは短期間で作業をしなければならず大変だったそうだ。
また、小川プロデューサーの口からは「トライ・ファイターズが優勝しない可能性もあった。ガンプラ選手権は次回もあるので、もう一度トライするという意味も込めて負けるという案があった」ことが明かされた。しかし、その案は監督の「子どもたちが見るアニメでは、主人公たちが勝たないとダメなんです」との意見で変更され、今の形となってトライ・ファイターズは優勝することになったという。
最後に、来場者に好評発売中の「HGBF トライオン3」と、9月12日(土)発売「HGBF カミキバーニングガンダム」が、大河原氏と大張氏のサイン入りで当たる抽選会が行われ、トークショーは幕を閉じた。
『ガンダムビルドファイターズ』シリーズのガンプラは、9月12日(土)に「HGBF カミキバーニングガンダム」が、11月には「HGBF すーぱーふみな」が登場する。こちらもぜひチェックしておこう。
(ガンダムインフォ編集部)
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